ソ連の危機と"殲滅大隊"

こんばんは、レナートです。 


突然ですが、第二次大戦のドイツでは国民突撃隊、イギリスではホームガード、大日本帝国では国民義勇隊...と、国家非常の危機には民兵組織が作られてきました。
では、ドイツの侵攻を受けたソ連はどうだったの?というお話です。 



(1941年:NKVD傘下のツーラ殲滅大隊。ツーラ武器工場にて)
独ソ戦期のソ連には "殲滅大隊 (Extermination Battalion)" なる民兵部隊があり、これは徴兵基準に満たない者や労働者によって編成された戦闘部隊です。 一応は志願制義勇兵らしいのですが、強制徴募の場合もあったとか (どっちやねん)。
組織としては国境警備や治安維持も担っていたNKVD地域支部の指揮下で活動するパターン、共産党の地方指導者が指揮官となるパターンがあったようです (管区指導者が隊長を務める国民突撃隊に似てますね)。 
※注:ロシア語の "Истребительный батальон" は「戦闘大隊」とも訳せますが、"Истребительный" は「(破壊を目的とした) 戦闘」のニュアンスがある形容詞のため、本記事内では「殲滅大隊」と訳させていただきます。
>> モシンナガン各型はこちら



(友軍との連携が上手く行かず殲滅されてしまうパターンの図)
殲滅大隊の任務としては、敵の破壊工作員や空挺兵の検挙、重要施設の警備、野盗の検挙やパトロールなどの治安・後方維持が主です。 
一方でモスクワやレニングラードなどの激戦地では、独軍の戦線突破箇所の穴埋め、正規師団到着までの遅滞戦闘などにも投入された例があるようで「あぁ...」としか言いようがないですね。 戦闘組織としてもソ連の中では下層に位置していたため、軍部と党とNKVDの板挟みになって指揮系統が混乱した、という話も残っています。 緒戦の混乱のためか、残された殲滅師団の資料は割合少なく、なんとも浮かばれんなぁ...。 



(1941年:ロス小銃で訓練を行うレニングラード民兵)
殲滅"大隊" と名前が付いているものの、規模は100~500人ほどとかなりバラつきがあり、装備も私服だったり、NKVD傘下の部隊では (本来は刑事犯に与えられる用の) 屋外労働用外套が支給されるなど、推して知るべし...と言った感じ。 
レニングラードではレンドリース品のロス小銃など、正規師団と補給形態 (使用弾薬) が異なる銃器が使用されています。 



(1941年:レベル Mle1886、ベルチェーを使用するモスクワ人民民兵第3師団)
第一次大戦時に各国から供与された小銃もかき集めて使用しており、フランス製小銃の使用が写真に残されています。 記録上、レベル Mle 1886、ベルチェー、果てはグラス Mle 1874まで使用されたとか...。 


(1920年:"アリサカ"を持って行進する赤軍兵士)
写真を見つけられませんでしたが、帝政ロシア期に輸入された三十年式、三八式など各種日本製小銃も使用されたようです。 
>> 三八式はこちら



(謎の改造SMLEを持つパルチザン:1942年)
SMLE No.1小銃もロシア内戦時に白軍への援助兵器として輸入されていたので、おそらく殲滅大隊でも使用されたと思われます。
(上掲のSMLEはモシンナガンのスリングが付けられるようにストックが改造されてたり、マズル周りもだいぶ変更されているような...)。 
>> SMLEはこちら



(Vz.24 短小銃?:所属時期不明)
1920年のポーランド・ソビエト戦争や、1939年のソ連によるポーランド侵攻における鹵獲品も殲滅大隊に配備されたそうです。 割合ポーランド モーゼルが多かったみたいですね。 
>> 在庫のモーゼル系小銃はこちら



(左:1942年 第79殲滅大隊 レニングラード州 / 右:1941~42年 女性パルチザン)
1940年のバルト三国の併合により、エストニア、ラトビア、リトアニアに由来を持つ銃も鹵獲され使用されています。 P14 小銃は複数写真が残っているので、そこそこ纏まった数が使用されたのでしょうね。 
>> P14 小銃はこちら



それでも殲滅大隊に配備される小火器は常に不足しており、武器が無い場合は自前の猟銃 (ベルダンやWW1後に余剰モシンナガンをショットガン化したフロロフカ↑) を用意したり、場合によっては「木の棒」が支給されることもあったとか...(ゲームではお馴染みの初期装備ですが...)。
>> 日本版のフロロフカ? 村田型散弾銃はこちら



(1941年:モスクワ人民民兵第3師団)
そんな殲滅大隊にも軽機関銃が (あれば) 配備されることになっており、こちらのモスクワ例ではポーランドから鹵獲したブローニング wz.1928を使っています。 弾が8mm モーゼル仕様なので、案外鹵獲運用しやすいかも? 当然MG08/15やZB26など、独軍の鹵獲兵器も有効活用されています。 
>> BAR M1918A2はこちら



(1941年11月7日:独軍が迫るモスクワ 赤の広場での軍事パレード。 一部の部隊はパレード後、そのまま前線へ向かったそうです)
帝政期、内戦期に導入されたルイスガンも使用されています。 帝政期に輸入されたルイスガンは極一部のみ7,62mmx54R仕様で、大多数は.303ブリティッシュ弾仕様のままだったようです。 
>> ルイスガンはこちら



(1920年頃の赤軍兵士)
ショーシャも使用された記録が残っていました (写真見つけられず...)。 


(時期不明:プスコフ地方のパルチザン)
こちらも帝政時代からなじみ深い、マドセン軽機関銃も殲滅大隊で使用された記録が残っています。 ショーシャよりかは信頼できそうですね...! 


(余談ですが、帝政ロシアに導入されたマドセンは7.62mmx54R仕様になっているので、マガジンのカーブが大きいのが特徴的ですね!) 


ということで、ソ連の "殲滅大隊" とその装備についてでした。 長くなりましたが、なんだか書いてて悲しくなる内容だったので一度に済ませてしまいました。 独ソ戦緒戦で使用された銃たちもよろしくお願いしま~す。 


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