- 商品番号:K10399
国名:日本
種類:単発式長銃
取扱店舗:東京店
- 【火縄銃 土佐八十匁砲金製大筒 昇龍降龍図 (在銘: 土州住川崎祐右衛門定義作)について】
本品は、戦国時代の実戦兵器から、江戸時代の泰平の世における「高い精神性と美意識」を象徴する芸術品へと昇華した火縄銃の逸品です。江戸後期に土佐国で作られた、実用よりも装飾性を重視した格調高い作柄となっています。 口径は 実測36.4mmで大口径の八十匁です。 全体の重量は15.4kgで非常に重厚な作りになっています・
銃身には、後方に向かってやや広がる丸銃身の上面を平らに削り落とした「表一角(おもていっかく)」と呼ばれる形状が用いられています。さらに銃身後部の尾栓には、主として西日本の洗練された銃身に見られる、トビの尾羽を模した「鳶の尾形(とびのおがた)」の仕立てが施されており、土佐筒ならではの細部まで行き届いた造形美を醸し出しています。その直線のキャンバスに、高肉彫(たかにくぼり)の技巧を用いて、今にも動き出しそうなほど写実的で立体的な阿吽(あうん)の「昇龍・降龍」が生き生きと表現されています。彫刻による龍の鋭い爪や厳しい表情は神秘的であり、見る者に畏怖を感じさせます。
古来、雷を生じさせ水を司るとされる龍の意匠において、左右の昇龍と降龍は、真理を求め己を高める修行を意味する「上求菩提(じょうぐぼだい)」と、天から降りて人々に救済をもたらす慈悲の心を現す「下化衆生(げけしゅじょう)」を象徴しています。これらが対となることで、武家における「運気上昇・大願成就」と「天の加護・厄除け・家内安全」という現世利益的な願いが表されています。
さらに、この循環は「過酷な鍛錬によって武芸を極め(上昇)、その強大な武力を私利私欲ではなく他者や世の中の平定・守護のために還元する(降臨)」という、武士や人間としての理想的な倫理観をも内包しています。表一角という直線美に、優れた彫刻技巧と自らを厳しく律する武士道精神が美しく融合した本作は、所有した武家の威信と高い格調を雄弁に物語る、西日本にしか見られない尾栓構造と土佐筒の掟を加味した歴史的・美術的に極めて価値の高い一挺です。 また表一角の砲身の後部上方(元目当ての後ろ)に高く盛り上がった「正」の文字に銀象嵌が施されています。
本品は在銘で、銃身下面には「土州住川崎祐右衛門定義作」の銘が切られています。 全国鉄砲鍛冶名鑑 P.83及び「全国鉄砲鍛冶銘地域別分類」P.271にその銘が土州 (=土佐国、現在の高知県) 住の鉄砲鍛冶として掲載されています。
本品の全体的なシルエットは庵の背が直線的に真っすぐ下がった台かぶの形状から上野国 (群馬県) の荻野六兵衛安重 (1613-1690年) が興した荻野流でないかと思います。 荻野流は江戸時代初期の寛文年間 (1661-1673年) 頃創始された、正木流など十二流派の砲術を極めた、和流砲術の一流派です。 安重の子である六兵衛照清 (てるきよ) が大坂で私塾を持って流派を広げました。 荻野流は各藩から入門者が多く、江戸時代を通じて最も流行しました。 砲術家の坂本天山や高島秋帆 (たかしましゅうはん) を輩出したことでも有名です。 大砲術に力を入れた流派であり、高島秋帆が荻野流砲術を基に製作した十匁筒を、 天保10年 (1839年) 5月に書き写した「高島所持荻野流拾匁筒之図」が残されています。 中筒(十匁前後)の現存品は数があり、荻野流諸流派における特徴の違いなどもある程度研究されておりますが、大筒の現存品は少ないため本品が荻野流であると断言は出来ませんが、土佐の中筒も同じようなシルエットですので、土佐國での流派の形状と思われます。
特に土佐國で製作された土佐筒と呼ばれる火縄銃の最大の特徴として、カラクリ地板の固定方法が挙げられます。 土佐筒では一般的な火縄銃のようにカラクリの地板が表側から鋲で固定される構造ではなく、地板の裏面に設けられた2箇所の固定金具に対して、銃床上面 (庵背) から2本の矢倉鋲を用いて固定する独特の構造を有しています。 本品の地板についても上記のような土佐筒特有の固定方法が採られており、地板の表面には鋲の頭が出ていません。(MM)
【本個体の説明】
砲身の昇龍降龍図は蝋型鋳造(ろうがたちゅうぞう)を用いて作られています。 蝋型鋳造とは蜜蝋(みつろう)や松脂を混ぜたもので精巧な龍の立体像を細かく作り、それを粘土で包んでから熱を加えて中の蝋だけを溶かし流すことで、極めて精密な空洞(鋳型)を作る技法です。江戸時代の精巧な置物や、大筒の立体的な装飾に使われた高度な技法です。 鋳造された立体的な昇龍降龍図は更に磨き上げられてから、繊細な仕上げ彫刻が施されています。
銃口部周りには筋立ての施された作域の良い八角やや寸の詰まった丸柑子が設けられています。 本品の先目当は「タンケン形」で後部はなだらかにカーブして低くなっています。 元目当は「千切透し」となっています。 銃身と銃床は二本の目釘と台カブの下方から「鳶の尾形」まで、1本の太い螺子で固定されています。 銃身下部の目釘金具と銃床の目釘穴の位置は2ヵ所とも一致しています。 真鍮製の目釘が1本(前方の目釘)付属しています。 銃床は上質な赤樫材と思われる、明るい色合いになっており縄目の木目も出ており、高級品に相応しい作りになっています。 表一角の砲身の上面の一部に鋳造の際に出来た僅かな「引け巣(ひけす)」を埋めて化粧した形跡があります。 銃床両側のシノギ目 (目釘穴) の穴の周りは真鍮製の桜花で飾られています。 台かぶ上面にある二ヵ所の矢倉鋲穴の周りと台かぶ下面にある一ヵ所金具についても、シノギ目と同じ真鍮製の桜花になっています。 いずれもほぼ同じ大きさの桜花が合計7個で統一されています。 カラクリは内カラクリ (蟹目カラクリ) で、カラクリの地板金や胴金、雨覆、火蓋といった真鍮部分についても、良い時代感がついています。 火挟本体は鎬が施された鉄製で火縄の保持部分のみ真鍮製となっています。 これも土佐の中筒に比較的多くみられる特徴です。 引金には用心金は設けられておらず、引金後方の銃床下部の銃把部分にナマコ金と呼ばれる強度を増す為の真鍮製の部品が取り付けられています。 引金とナマコ金は完全に独立した配置ではなく、引金を引いた際にナマコ金前部の空洞部分に引金後部が入り込む構造となっています。 これも土佐の中筒に多くみられる特徴です。 台かぶは小さく後部が垂直にすっぱり切れ、そこに真鍮製の芝引金が銃尾の全てを覆う床尾板になっているおり、象ノ鼻と呼ばれる台かぶ後部に輪束穴があるこれらの点も土佐中筒の共通点です。 銃身内は銃口から銃身後部まで綺麗に整備され抜けて (通って) おり、火穴も完全に通っています。 尾栓は「鳶の尾形」ですので、簡単には外れません。カラクリの作動については至極完全で、火挟を起こした際のロックはしっかりと掛かり、火挟が起きた状態で引金を引くと、火挟が力強く落ちます。 木製のかるか (さく杖) が付属します。(MM)
弊社で入荷した大筒の中で最も口径が大きく、装飾が凝った逸品です。価格も火縄銃の中では最高値になっています。 土佐筒の掟に従いつつも、材料、竜図文様、「鳶の尾形」尾栓と特徴の多い一挺です。
※【本個体の説明】は現在作成中です。 後日、加筆/訂正が行われる可能性がございます。本品の程度/状態について詳しくは東京店までお問合せください。
【登録証情報】
(種別: 火なわ銃式、長さ: 一尺六寸九分0厘[約51.2cm]、口径: 一寸二分五厘[約3.79cm]、銘文: 土州住川崎祐右衛門定義作)
【その他の情報】
昭和33年1月16日に愛媛県教育委員会によって交付された銃砲刀剣類登録証が付いた、完全可動する実物の古式銃です。 無可動実銃ではありません。
本銃は約150年以上前の古い機械物の骨董品であり、高価な品でございますので、出来ましたら現物をご確認の上、ご購入いただけますようお願いいたします。 無可動実銃とは異なり作動する機械物ですので、作動や仕上げの確認をご自身で行われる事をお勧めいたします。 通信販売でのご購入を検討される方は、詳細画像を十分ご確認いただいた上でご注文ください。
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