- 商品番号:K10255
国名:日本
種類:火縄銃
- 【火縄銃 日野一匁射的筒 「菊能露」銀象嵌 (在銘: 江州日野小林真平武重)について】
江州日野 (現在の滋賀県蒲生郡日野町) の鉄砲鍛冶により制作された、日野筒と呼ばれる火縄銃です。
同じ江州の国友筒が幕府の定式鉄砲として納められていたのに対し、日野筒はそのような受注がなかった事から、市場での競争力を高めるため当時は廉価で販売する手法が取られました。 しかしながら、その作り自体は他所で製作された火縄銃に決して劣るものではなく、緻密な装飾が施された特注品も多く見られます。
本品は在銘で、筒 (銃身) の下面には「江州日野小林真平武重」の銘が切られています。 登録証では「江州日野小林真平以下不明」と書かれていますが、以下不明の部分にははっきりと「武重」と刻まれています。 小林真平武重は江州日野の鉄砲鍛冶の一門で「全国鉄砲鍛冶銘鑑」P.166及び「全国鉄砲鍛冶銘地域別分類」P.148に「江州日野住」と掲載されています。
本品は口径が実測約8.8mm (約一匁) の射的筒で、全長は約126cm、銃身長が約99.3cmとなっています。 本品は台木 (銃床) 部分をはじめ、各部に田付流用銃の特徴が見られます。 田付流とは田付兵庫助源景澄 (のち宗鉄) により開祖された砲術流派で、井上流・稲富流と共に徳川幕府の鉄砲役三大流派として重用されました。 田付流の影響を受けた細筒を含む火縄銃は堺、國友、日野といった各地で製作されました。 特に日野ではその割合が多かったように思われます。
田付流用銃の最大の特徴は銃床部の形状で、銃床後端が直線的にカットされ、断面が平坦な形状となっています。 本品にもその特徴的な平坦な形状の銃床尾が確認できます。 また、銃を構えた際に左手で支える銃床部分が削り込まれているのも特徴的です。 筒 (銃身) は田付流の火縄銃に多く見られる八角型で、後方に向かって少し広がった形状となっております。 銃口部は僅かに広がった形状で柑子は設けられていません。 本品の銃身は八角銃身の上面と上面に隣り合う2面に中央が凹むようにアール (肉削ぎ) 加工を施した凝った作りとなっています。 元目当の後方に「菊能露 (二文字目の「能」は「の」の変体仮名)」という崩し文字が銀平象嵌で入っています。 「菊の露」は「菊に降りた露」のことで、不老長寿をもたらす霊水だと言われています。 中国の故事に由来し、日本では「枕慈童 (まくらじどう)」という能の演目により知られています。 この象嵌は擦り付け象嵌ではなく、作域の良い本歌の打ち込み象嵌で日野鉄砲鍛冶の得意とするものです。 先目当は杉形、元目当は前方が千切透シ、後方が筋割となっております。 銃身は台 (銃床) に対して3箇所の目釘により固定される構造です。
カラクリは蟹目ナキ内カラクリで、カラクリの地板や胴金、雨覆、楔、煙返シ、火蓋は真鍮製、火挟、火皿は鉄製です。 火挟は筋立てや唐草図銀線象嵌で装飾されており、立体的な桜花形の矢ハズ鋲で留められています。 カラクリの地板には「梅の木に集う二羽の鶯」が軽妙なタッチで彫り込まれおり、さらに立体的な桜花形の鋲で留められた凝った造りとなっています。 引金は実の下半分を切り落としたようなドングリ形で、座金は銀製三ツ団子形です。 引金には真鍮製の用心金が設けられており、その用心金を固定する座金は分銅形で楕円形の菊鋲で留められています。 また、銃床の目釘座やカラクリの鋲裏座金には桜の花弁を象った金具による装飾が見られます。 (MM)
【本個体の説明】
本品の筒 (銃身) は全体に制作当時の防錆用の黒っぽい仕上げ (錆の一種) がよく残っており、しっかりとした状態が保たれています。 銃身上面の「菊能露」の象嵌については比較的良好に残っています。 銃身下面の目釘金具と銃床の目釘穴の位置は3箇所とも一致しています。 尚、目釘は付属致しません。
銃床についても製造された時代を考慮すれば比較的コンディションは良好で、若干の打ち傷を除いて目立った割れや欠けなどは見受けられず、大部分にオリジナルの艶の有る仕上げが残っています。 鉄製の火挟については、やや表面錆が見られます。 カラクリの地板に施された彫刻についても比較的良好に残っています。
カラクリの作動については完全で、火挟を起こした状態でのロックはしっかりと掛かり、引金を引くと火挟がスムーズかつ力強く落ちます。 火蓋の開閉についても問題なく行う事が可能です。 銃身内は銃口から銃身後部まで完全に抜けて (通って) おり、火穴も抜けていますが、現状では尾栓は固着しています。、木製のカルカ (さく杖) が付属致します。
本品のような高級な日野筒は意外と現存品が少なく、彫刻入りの地板を始め各所に凝った細工が施されています。一般的な田付流用筒とは異なった魅力ある品です。 口径も一匁と射的専用に作られた資力のある武家によって特注された逸品です (MM)
[本個体各部名称及び形状と有無]
口径: 8.8mm (実測)
重量: 3.3kg
銃身: 八角銃身、上面と上面に隣り合う2面は中央が凹むようにアールがかかっている
銃身筋立: 無
銃身装飾: 「菊能露(きくのつゆ)」銀平象嵌
露: 無
柑子: 無
玉縁: 無
先目当: 杉形
元目当: 前方が千切透シ、後方が筋割
センサシ穴(目釘):3箇所
尾栓: 有(固着)
台: 虎杢
先台面取リ: 有(先台の先端まで面を落としている)
目釘座(シノギ目): 銀製桜花形6箇所
目釘: 合計3本
腕貫ノ穴 (先台輪束穴): 無
台裏墨書: 無
カルカ: 木製
矢袋金具: 無
背割: 有、赤い6mm四方の金属塊で2箇所留められている
背割飾金具: 無
胴金: 銅製幅約9mm
火挟: 鉄製節有、唐草図銀象嵌
矢ハズ鋲: 真鍮製立体的な大型桜花形
弾金: 無
火皿: 鉄製
火蓋: 真鍮製
雨覆: 真鍮製
煙返シ: 真鍮製
楔: 真鍮製一節竹
胴金後部金具: 無
矢倉鋲: 無
矢倉鋲座: 無
芝引金: 真鍮製剣先形
台かぶ飾金具(右): 無
台かぶ飾金具(左): 無
火縄通シノ穴: 無
台かぶ輪束穴: 無
台かぶ火消穴: 真鍮製円形
鋲裏座金: 銀製桜花形(中型)3箇所
地板: 真鍮製梅鶯図(鋲頭は立体的な桜花)
地板尻: 角(垂直ニ切落シ)
カラクリ: 蟹目ナキ内カラクリ
疣隠シ: 無(疣隠シの位置に半菊形の金具有)
背割端金具: 銀製猪目透シ
矢倉鋲裏座: 無
鋼鋲(火縄下ゲ輪): 無
鋼鋲(火縄下ゲ輪)ノ座: 無
用心金: 真鍮製
用心金座: 真鍮製分銅形に立体的な楕円形の菊鋲留
引金: 真鍮製、実の下半分を切り落としたようなドングリ形
引金座: 銀製三ツ団子形<(日野筒の特徴かと思われる)br> ナマコ金: 無
駒型金物: 無
刻印: 無
【登録証情報】
(種別: 火なわ式銃砲、全長: 126.0cm、銃身長: 100.0cm、口径: 0.8cm、銘文: 江州日野小林真平以下不明)
銃身長は実測約99.3mmですが、登録証では銃口から胴締金の間を計測した長さが記されています。
【その他の情報】
昭和52年5月12日に三重県教育委員会によって交付された銃砲刀剣類登録証が付いた完全可動する実物の古式銃です。 無可動実銃ではありません。
古式銃は約150年以上前の古い機械物の骨董品であり、高価な品でございますので、出来ましたら現物をご確認の上、ご購入いただけますようお願いいたします。 無可動実銃とは異なり作動する機械物ですので、作動や仕上げの確認をご自身で行われる事をお勧めいたします。 通信販売でのご購入を検討される方は、詳細画像を十分ご確認いただいた上でご注文ください。
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