- 国名:日本
種類:細筒
- 【火縄銃 二分割銃床 堺三匁細筒 (在銘: 半巻張 摂州住榎並佐兵衛作 栢倉惣右ヱ門信朋代求之について】
本品は堺筒の中でも店頭に並んだ既製品ではなく、銃床が二分割になり、丁寧な色絵象嵌が入った凝った特注の高級品です。 彫物や象嵌の出来も良く、上手な品です。 彫刻が入った金具や象嵌入りの銃身は時代を経た侘び寂びを感じる風格があり、色絵使いの装飾が丁寧で上手です。
本品は在銘で、銃身下面には「巻張 摂州住榎並屋作兵衛作」の銘が切られています。摂州堺 (現在の大阪府堺市)の「榎並屋作兵衛」により製作された堺筒です。 「榎並屋佐兵衛」は「全国鉄砲鍛冶銘鑑」P.203及び「全国鉄砲鍛冶銘地域別分類」P.51に掲載されている堺の鉄砲鍛冶です。
「栢倉惣右ヱ門信朋代求之」という銘文は、この火縄銃の持ち主や注文の経緯を表しています。 言葉を分解すると、以下のような意味になります。 「栢倉 (かやくら) 惣右ヱ門 (そうえもん) 信朋 (のぶとも) は武士以外では苗字帯刀を許された豪商や、少なくともこのような特注の火縄銃を購入出来る財力はあった人名です。「栢倉」が名字、「惣右ヱ門」が通称、「信朋」が実名 (諱) です。「代求之 (これをもとめかえる / だいきゅうし)」は「代 (しろ)」は代金や対価、「求之 (これを求む)」は手に入れたことを意味します。これらを合わせると、「栢倉惣右ヱ門信朋という人物が、代金を支払って (あるいは何かと引き換えに) この銃を注文し、手に入れた」という意味になります。 したがって、「諱(いみな) 」を持った本銃の所有者は上流階級 (貴族、武士、高位の官職を持つ者) で、諱 も持っている事から、財力だけではなく高位の人物であった可能性があります。 銘文の最後の「二」は組み立ての際の番号と思われ、銘文の一部ではありません。
堺筒とは摂州堺の鉄砲鍛冶によって製造された火縄銃で、口径は二匁目玉から三匁目五分玉程度の細筒で、銃身や台木など全体に豪華な装飾が施されたものが多く見られます。 これらの火縄銃は主に狩猟や射的用に製造されました。 本品は堺鍛冶の作ですが、堺筒の仕様に捉われない拘りの多い特別注文の高級品です。
本品は全長136.1cm、銃身長106.1cm、口径実測12.4mm(三匁)、重量約3.1kg。 一見すると一般に細筒 (小筒) と呼ばれるサイズの火縄銃ですが、銃床(台)が二分割できるような特別仕様になっています。 このような方法で二分割される銃は細筒300-500挺の中で1挺ほどしかない希少品です。 銃床を二分割する事によって銃身の長さまで短くは出来ますが、近世の銃のように半分ほどのサイズにならない (全長が136cmから106cmになる程度) のに、このような構造になっているのは、注文主の拘りの高さ故と思われます。
銃身は八角銃身で、柑子は芥子柑子の中でもまん丸に膨らんだ形状で、備前柑子に近いものです。 柑子にまで色絵象嵌が入った手の込んだ品です。 芥子柑子とは、ケシの花が開花する前にプックリと膨らんだ形状から名付けられました。 先目当はタンケン形で後部がなだらかに低くなっており、刃は銀と思われる異なった素材になっています。 元目当は堺筒に多く見られる、前後に裾野が長く広がった富士山形のものが付いており、側面に「一星 (一つぼし)」が穿ってあります。 銃身は銃床に対して3ヶ所の菊花紋の目釘金具によって固定される構造となっています。 銃身の上部後端には本歌の色絵象嵌で「昇龍図」が上手に配されています。
台 (銃床) については、各部に菊花紋の飾り金具が取り付けられた装飾に富んだ作りとなっており、カルカ取付部 (矢袋) の金具に波文様が入っています。 胴金前方の銃床下面には梅花文様の金具が、そして用心金と取付金具まで松、竹、蓑亀、鳥 (鳳凰?)、菊花文 (のバリエーション) が配されています。 幅広 (約35mm) の胴金には牡丹の花と唐草文を組み合わせた「牡丹唐草」の彫刻、そして後方の雲形板に「兜図」が彫られています。 庵の上部分の真鍮製で大型の芝引金には雲図が施されています。 駒形の部分には「竹/笹文」が入っています。 左側面に八万座のような縁が付いた火消シ穴の基部に、上手な菊花の飾り金具が取り付けられています。 また、反対側は猪に跨った金太郎と思われる人物を意匠した、左側面に劣らない上手な飾り金具で飾られています。 銃床の目釘座やカラクリの鋲裏座金には、真鍮製の菊花文 (のバリエーション) を象った座金と、左右各1ヶ所ずつ真鍮製の桜花の金具が用いられています。 尚、銃床には花弁が何重にも重なった菊の座金のついた火縄通しの穴が設けられています。
カラクリは外カラクリ (外記カラクリ) となっており、火挟の軸部分はシンプルな丸型で、半菊状 (八葉) の蟹の目隠しが取り付けられています。 彫刻の入った胴金上部部分から雲形板にかけて「兜図」を象った彫刻が施されており、その後ろにも溝状の彫が入った、通常の雲形板よりも凝った造りです。 引金は雫形で、用心金 (トリガー・ガード) が設けられています。 (MM)(KK)
【本個体の説明】
本品の筒 (銃身) を含む鉄部は黒錆に覆われていますが、これは当時の日本における防錆方法であった錆付けによるもので、欧米のようにブルー仕上げがなかった日本では一般的なものでした。 銃身にはやや表面錆痕が見受けられるものの、大きな欠損等は見受けられず、概ねしっかりとした状態が保たれています。 銃身上面に施された「柏樹図」の銀象嵌も良好に残っています。 台 (銃床) については、経年による気にならない小傷や擦れが見られるものの、現状、比較的しっかりとした強度が保たれています。 全体に、銃床各部に取り付けられた飾り金具については、現状目立った欠品等は見受けられません。 カラクリの地板や火挟、雨覆、楔、火蓋、胴金、引金、用心金といった部分についても、現状目立った腐食等は見られず、適度な時代が付いた良い雰囲気となっています。 用心金の取り付けには僅かに遊びが見られますが、固定自体はしっかりとしています。 杢目が出た上等な台木右側面(火皿の前)から約15cmほど古いヒビ割れがありますが、強度的に問題はなく、他の部分のプラス面を考えると許容範囲です。
銃身内は銃口から銃身後部まで完全に抜けて (通って) おり、火穴も抜けています。 尾栓は現状では固着していますが、ねじ込み部分の基部には大きな錆は出ておらず、外れそうに見えます。 カラクリの作動については良好で、火挟を起こした際のロックはしっかりと掛かり、火挟が起きた状態で引金を引くと、火挟がスムーズに落ちます。 火蓋の開閉についても問題なく行う事が可能です。 木製のカルカ (さく杖) が付属いたします。 作者から堺筒と名付けていますが、一目で凝った事が判る高級品です。 ニ挺目、三挺目の堺筒、もしくは変わり筒のコレクションとしてお勧めの一挺です。 (MM)(KK)
【登録証情報】
(種別: 火縄式銃砲、全長: 136.1cm、銃身長: 106.1cm、口径: 1.2cm、銘文: 半巻張 摂州住榎並佐兵衛作 栢倉惣右ヱ門信朋代求之二)
【その他の情報】
昭和49年2月12日に岡山県教育委員会によって交付された銃砲刀剣類登録証が付いた、完全可動する実物の古式銃です。 無可動実銃ではありません。
古式銃は約150年以上前の古い機械物の骨董品であり、高価な品でございますので、出来ましたら現物をご確認の上、ご購入いただけますようお願いいたします。 無可動実銃とは異なり作動する機械物ですので、作動や仕上げの確認をご自身で行われる事をお勧めいたします。 通信販売でのご購入を検討される方は、詳細画像をご確認いただいた上でご注文ください。
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