トンプソンってストック長くない?

こんばんは、レナートです。
前回はストックのバットプレートからトリガーまでの距離、Length Of Pull (LOP) に注目した記事を書きました (>>その記事はこちら)。 
簡単におさらいすると、各国の主力小銃のLOPは33~35cmぐらいで設計されているというお話です。 平均身長なども加味されていると思うので、この辺りの数値が「当時の兵隊さんが心地よく構えられる平均値」なのかな~と思います。 


そして、トンプソンです。 前々からストック長すぎでは...と感じておりましたが、何度考えても「アメリカ人って身体がデカいからねガハハ!」的な雑なイメージに帰結してしまうので、どういう経緯・目的でこうなったのか調べてみました。 


こちらはトンプソンがメジャーになった1920年代、比較として現代2020年代のデータをそれぞれ米英露独日各国の平均身長(男性)を抜粋したものです (
データ出典:NCD Risk Factor Collaboration)
1920年代の米国人男性は平均171cm (当時の世界平均でも第3位) と確かにデカかったのですが、それにしてもまだトンプソンのストックは長大すぎるような...私 (167cm) はトンプソンを構えずらいな~と思いますし、後述しますが当時の兵隊さんも構えずらさを感じていたエピソードがあります。 


・トンプソンは"腰だめ撃ちが念頭にある"
そもそも極初期のトンプソンは、ベルト給弾のトンプソン パースエイダー (左)、ボックス or ドラムマガジンのトンプソン アナイアレーター (右) などがありますが、「塹壕での腰だめ撃ち運用」を基本に設計されており、ストックを装備しない設計でした。
(パースエイダーは信頼性の問題から廃案になり、アナイアレーターも欧州への輸送中にWWI終結、実戦に投入されることはありませんでした)。 


その後、M1921からストックが装備されるようになります。 この長いストックを腕と腰で挟むように保持することで、腰だめ射撃時の安定性を高める狙いがあったようです。 


・銃の構え方の変化
1920年代と比べて銃の構え方は変化しており、だんだんと「目標に正対する」ようなフォームになっています (ボディーアーマーの普及やリコイルマネジメントなど、随分進化していますよね)。
19~20世紀に立射において一般的だった「体を目標に対して傾ける構え (bladed stance)」 の場合、右半身がより後方に位置する都合上、ストック全長は多少長くても問題ありませんでした。 そのため、トンプソンの長いストックもある程度は許容されていた...のかもしれません。 


・ストックの長さへの対処
とはいえ、当時からストック長に関する不満はあったみたいです。 調べたところ、特にイギリスでの使用例 (コマンド部隊) ではストックを短縮化する改造も行われたというエピソードがあるそうです、長いもんね...。 


(画像はベトナム戦争中のM1トンプソン)
アメリカ軍でもストックの取り外して運用を行った例があり、アメリカ人でも長いと感じる場合があったようです。 


後継のM3グリースガンではスプリングフィールド M1903やガーランドとほぼ同じ、LOPは33cmに設計されています。  

 
トンプソンのバットストックは、後方へ行くにつれて落ち込んだようなデザインになっています。
これは先述の腰だめ射撃で小脇に抱え込む目的及び、当時は「頭を真っ直ぐ立てたままサイトを覗き込む姿勢 (Heads-up)」が一般的だったことにも関係しているとか。 
しかし、バットプレート (反動を受け止める) 位置がかなり下側にあるため、より高い位置にあるボルトの生み出す反動により (てこの原理のように)、銃口が上を向いてしまう問題点がありました。 
当時の兵士の意見として「トンプソンは反動が大きい」点が指摘されていますが、ストックのデザインも関係していたのかもしれませんね。 機関部が長いですし、機構的な制約もありますので、トンプソンを人間工学的に使いやすくするのは難しいのかもしれません...。 


トンプソンを使用した米英ソ中、その交戦国である独伊日でも鹵獲使用されていますが、使った人がどんな感想を抱いたのか気になります...(トンプソンを持ってワイワイしているドイツ降下猟兵、楽しそうですね)。


とくに平均身長で劣る日本兵は大変だったんじゃないでしょうか...フィリピンやジャワなど、緒戦に鹵獲したトンプソンを纏まった数量運用していたようです。 


余談ですが、1943年の米軍レポート (Intelligence Bulletin Vol.01 No.10 June 1943) の内容が興味深かったので紹介します。
同レポートの「ビルマで観察された日本軍の戦術の一部」に、「夜間、日本軍はトンプソン短機関銃と曳光弾を携えた兵士を我々の陣地に向けて送り込むことが知られる」「この射手は敵陣地と思われる場所に向けて短連射を繰り返し<中略>後方の仲間はトンプソン射手を狙撃している自動火器の位置を特定しようとした。」とのことで、威力偵察に鹵獲トンプソンが使用されていたみたいです。

ということで、トンプソンの長いストックには色々理由がある!というお話でした。 
>> トンプソン シリーズはこちら



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