さて、本日は前回に続いて、ベルギー観光 (バストーニュ編) の模様をお届けします。
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線がお好きな方ならすでにご存知かと思いますが、ここバストーニュ (Bastogne) は、バルジの戦いにおいてアメリカ軍がドイツ軍に完全に包囲され、危機的状況に陥っていた要衝です。 そこへパットン将軍率いる「アメリカ第3軍」が猛進し、劇的な包囲網突破を果たした「バストーニュの戦い」の舞台となった、まさに歴史の転換点とも言える場所です。
バストーニュに到着して最初に私たちを迎えてくれるのが、市街中心地にあるマコーリフ広場 (Place McAuliffe) に佇むM4A3 シャーマン戦車です。
近寄って見ると、車体の被弾痕が生々しいですね。
広場には、ドイツ軍からの降伏勧告に対して「NUTS! (ふざけるな!)」と一蹴した有名な返答で知られる、第101空挺師団長代理アンソニー・マコーリフ准将の胸像も設置されていました。
広場周辺には、当時の緊迫した状況を伝える写真パネルなども展示されており、いよいよバストーニュの地へやって来たという実感が湧いてきます。
現在の広場周辺の風景を先ほどの写真パネルと見比べると、当時の面影を残している建物もちらほら残っています。
この日私たちが宿泊した宿は、バストーニュの街から南へと延びる、アセノワ (Assenois) という村へ向かう街道沿いに位置していました。 部屋の窓からも遠くにアセノワの町並みを望むことができます。 歴史的には、第3軍の先鋒部隊がこのアセノワ側から北上する形でドイツ軍の包囲網を破り、バストーニュへの連絡路を切り開いたため、私たちが泊まったこの周辺一帯も当時は凄まじい激戦地だったことでしょう…。
この日の晩は、宿で『バンド・オブ・ブラザース』のバルジの戦いの回を鑑賞しながら、翌日のバストーニュ観光に備えて気分を盛り上げていきます。
翌朝、宿を出発した私たちは、再び街道をバストーニュ方面へと北上します。
途中、街道沿いの草むらに当時のコンクリート製トーチカがひっそりと残されていました。 このトーチカは元々1935年頃にベルギー軍が国境防衛のために建造したものですが、バルジの戦いの際には、第4機甲師団のCharles Boggess中尉率いる戦車部隊 (バストーニュに一番乗りしたシャーマン・ジャンボ「コブラ・キング」が有名) が、このトーチカ周辺に陣取るドイツ軍を制圧し、バストーニュへの最初の突破口を開いたという記念すべき場所でもあります。
トーチカの見学後は、マコーリフ広場近くのカフェに移動し、クロワッサンとコーヒーで朝食を取ります。 バストーニュ探索を前に、とても優雅な気分になります。
バストーニュ周辺にはバルジの戦いに関連した博物館がいくつか点在していますが、この日最初に訪れたのは、旧ハインツ兵舎の敷地内にある「バストーニュ・ウォー・ルームズ (Bastogne War Rooms)」です。
こちらは大阪店のナベさんも2014年に訪れた博物館で、当時はベルギー軍人の方がガイドをしてくれるツアー形式だったそうですが、近年リニューアルされてシステムが変わったようで、各自で館内を自由に見学して回るセルフ方式となっていました。
元々の歴史的な兵舎の建物を活かした構造になっており、壁面にはバルジの戦いの最中にまさにこの場所で撮影された写真パネルが多数展示されています。
館内の展示コーナーの入口にも、誇らしげに巨大な「NUTS」の文字が。 ちなみに、こちらの「バストーニュ・ウォー・ルームズ」のチケット売り場では、後でご紹介する「バストーニュ・ウォー・ミュージアム」や「ボア・ジャック のフォックスホール」のチケットもまとめて購入する事ができます。 なお、「ボア・ジャック のフォックスホール」については、現地では紙のチケットの購入ができないので要注意です! (Webからは購入可能です)。
1Fの展示フロアでは、当時両軍が使用した各種の軍装や個人装備品が多数展示されているほか、巨大な戦況マップを用いて、バストーニュ包囲戦の緊迫した推移を時系列で学べるコーナーなどが充実していました。
そして1Fを見終えた後、階段で薄暗い地下へと降りていくと、ガラリと空気が変わり、当時の地下司令部の雰囲気が見事に再現されています。
地下の各部屋では、当時の司令部内の様子を再現した臨場感あふれるドラマ仕立ての映像が流されていました。 マコーリフ准将がドイツ軍からの降伏勧告の書状を受け取り、「NUTS!」と言い放つまでの経緯が非常にリアルに描かれています。
実は見学中には知らなかったのですが、後から調べてみて驚きました。 なんとこの地下室そのものが、当時マコーリフ准将が実際に執務を行っていた本物の司令部跡であり、「NUTS!」のセリフもまさにこの空間で発せられたものだったのだそうです。 どうりで博物館全体が「NUTS!」推しなわけですね…!
バストーニュ・ウォー・ルームズの見学後は、同じ敷地内のお隣にある「バストーニュ・バラックス (Bastogne Barracks)」へと移動します。
こちらは軍の車両修復センターも兼ねているようで、第二次世界大戦時の軍用車両を中心に、戦車や軍用トラック等が館内に所狭しと並んでいます。
タミヤの1/35でおなじみの105mm榴弾砲搭載型のシャーマン戦車。 実に味のあるフォルムですね。
ガレージの外に出ると、なぜか屋外にはソ連のIS-3M スターリン重戦車が…。
バストーニュ バラックスで軍用車両を堪能した後は、車を走らせてバストーニュ郊外にある「バストーニュ・ウォー・ミュージアム (Bastogne War Museum)」へと向かいます。
こちらの博物館は、バストーニュにある軍事博物館の中でも最大規模のもので、各国からの来場者で館内は大盛況となっていました。
極寒のアルデンヌの深い森や、激しい砲撃によって荒廃した市街地の様子が等身大のジオラマで大掛かりに再現されており、見せ方に凝っているエンターテインメント性の高い展示内容です。
ただ、「MG42」として展示されていた銃が戦後ユーゴスラビアで製造されたM53だったのは、少し残念でしたが…。
バストーニュ・ウォー・ミュージアムを後にし、このベルギー旅で最後に向かったのは、すぐ近くの森に位置する「ボア・ジャックのフォックスホール (Easy Company Foxholes Bois Jacques)」です。
ここはドイツ軍の包囲網に耐え抜いた「アメリカ陸軍第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊第2大隊E中隊」の兵士たちが、実際に掘って過酷な冬を過ごした蛸壺壕 (フォックスホール) の跡がそのまま残されている史跡です。 前夜に宿のテレビで観ていた『バンド・オブ・ブラザース』の舞台そのものの光景が広がっています。
車道沿いにある入場ゲートを抜けて、静かな森の中へと入っていきます。 (チケットは事前に「バストーニュ・ウォー・ルームズ」で購入していたのですが、なぜかゲートのバーコード・リーダーにチケットが反応せず焦りました…)。
生い茂る木々の間に、当時兵士たちが身を潜めていた蛸壺壕が、今もはっきりと点在しているのが確認できます。
ボア・ジャックの森を抜けると、ドイツ軍側の拠点のあったフォイ (Foy) という村が見えます。 バストーニュの包囲が解かれた後、米軍はここから反撃に転じ、森の中から雪原に出てフォイを制圧し、ドイツ軍を押し戻して行くことになりました。 雪原を抜けてフォイの村を攻略するシーンは、『バンド・オブ・ブラザース』でも描かれていましたね。
ボア・ジャックの森からの帰り道に通過したフォイの村。 道沿いの古い民家には、弾痕と思しき穴が多数残っていました。
というわけで、2日間という限られた時間での強行軍ではありましたが、古式銃の故郷リエージュから、バルジの激戦地であるバストーニュまで、ベルギー東部の濃厚なミリタリーの歴史を満喫した旅となりました。
その日の夜までに無事にブリュセルに戻ってレンタカーを返却し、ベルギーの旅の締めくくりとして、3人でベルギー・ビールで乾杯。
次回からは大阪店のアルマ氏にバトンタッチし、海を渡ってイギリス編の模様をお届けしていく予定です。
それではまた!!
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