- 国名:日本
種類:中筒/大筒
- 【火縄銃 「丸に隅立て井筒紋」稚児四匁五分中筒について】
本品は他の銃と並べて比べなければ、一見三十匁 (約26mm) クラスの太身の中筒に見えます。 しかしながら、口径が約14mm (四匁五分)、全長が963cm、銃身長が39.6cmと約1/2サイズの年少者用にスケール・ダウンされた稚児中筒です。 小型ではありますが、年少者であれば抱きかかえるようにして射撃をするのに丁度良いサイズであったと思われますが、実用と言うよりは儀式用ではないかと思います。
本品の銃身は後方に向かって緩やかに広がった太く短い丸銃身で、上面のみ平坦となった「表一角」と呼ばれる形状となっています。 銃身上面前後には大きく二箇所、銃身の太さに合わせて大きさが異なった「丸に隅立て井筒 (まるにすみたていづつ) 紋」が銀平象嵌で施されています。 「丸に隅立て井筒紋」は静岡県、鹿児島県、奈良県、高知県、群馬県に多い家紋で、名字の一部に「井」の字を含む家の家紋として使われています。 銃身上面と柑子周りなど外部から見える部分全体に「シルクロード経由で日本に伝来した蔓 (つる) が四方に延びていく様子」から「長寿や繁栄」の意味合いのある縁起柄である「唐草模様」が真鍮象嵌がびっしりと施されています。 銃身は無銘となっており制作場所の特定はできませんが、國友系の鍛冶が作ったのではないでしょうか?
銃口部の周りに筋立てが施された八角柑子が設けられています。 銃身は2箇所の目釘によって銃床に取り付けられる構造となっています。 銃床両側のシノギ目 (目釘穴) の穴の周りは銀製の桜花で飾られています。 台カブ左側面にある三箇所の地板鋲穴の周りの金具についても、シノギ目と同じ銀製の桜花になっています。 いずれもほぼ同じ大きさの桜花合計七個で統一されており、一見装飾が少ないかとも見える中にも統一性を持たせた渋い銀金具が引き立ちます。 台カブ左側面に「火縄消し」の穴があり、穴の周りにもシノギ目と同じ銀製の輪 (環) が嵌められています。 巣口 (銃口) は銃身の太さ (約43mm) に比べ遥かに小さく、約14mmとなっています。 先目当は「たんけん型」で、先端に銀製と思われる刃が付いています。 元目当は中筒では珍しい「片富士型」となっていることからも、無銘ながら上等な筒である事が伺われます。 銃床の前側面に長方形の銀製金具で大きく縁取りされた「腕貫の穴」が左右に貫通しています。 本品のカラクリは非常にシンプルな内カラクリとなっており、カラクリの地板金や火蓋、雨覆、楔、胴金、引金等の部品は真鍮製となっており、胴金の色合いが僅かに異なります。 火挟は鎬を施した鉄味の良い鉄製で、これも上手です。 引金は小孔の開いた変形三角形 (一種の舌形) で、用心金は元々設けられていません。 銃床の後部 (バットプレートに相当する部分) は銀製の芝引金で飾られています。 献上品によく見られる黒漆仕上げの銃床に桜花の飾り金具が映える一品です。 また、四国の中筒には稀に黒漆仕上げが用いられています。 典型的な中筒の形状をしていますが、四国地方の中筒の特徴を備えています。 平成8年の愛媛県登録ですので、四国で見つかった品であることが伺われます。
江戸時代では元服したら帯刀 (二本差し) が許され、砲術家の家系や財力がある武士はその頃より射撃も嗜みとして行い、体格に併せて小型の銃が作られました。 火縄銃ではこのような小型の品は、「御座敷鉄砲」「稚児鉄砲」と呼ばれる事があります。 弊社には明らかに年少者用と思われる稚児銃が複数挺入荷しており、全て土佐藩 (現在の高知県) で作られていました。 全国的に見ても珍しい稚児銃の殆どが土佐藩で作られたのは、藩士の子弟教育に力を注いでおり、特に幼少の頃から砲術を学ばさせる為に作られた結果でしょうか? 稚児銃という特殊な銃が土佐藩で多く作られたのであれば、今後の研究が期待される分野です。 弊社では色々な要素から本品は「幕末から明治初期の土佐の稚児鉄砲」ではないかと考えています。 また、本品が年少者用の「稚児鉄砲」と考えた理由の一つとして、全体的な大きさもしかりですが、「右手で銃を握った際の引き金の位置」を挙げる事が出来ます。 本品は通常の中筒より「指二本ほど」は後方に引き金が配置されていおり、成人男性が握ると引き金があまりにも後ろに位置するため、非常に使い辛くなっています。 これが元服頃の年少者が握ると丁度良い (引き指が引き金に当たる) 位置になります。(MM)
【本個体の説明】
本品の筒(銃身)は全体的に黒錆に覆われていますが、これは当時の日本における防錆方法であった「日本刀の茎 (なかご)」の錆付けと同じ処理方法によるもので、欧米のようにブルー仕上げがなかった日本では一般的なものでした。 銃身上面の丸に隅立て井筒紋の銀平象嵌や唐草模様が真鍮象嵌については、大部分にしっかりと残っています。 銃床に隠れる銃床下部等には一部表面錆痕や若干の朽ち込みが見受けられるものの、概ね良好な状態が保たれており、外部から見える部分は非常に良い鉄味が出ています。 銃身下部の目釘金具の位置は銃床の目釘穴の位置と2箇所とも完全に一致しています。 尚、目釘は付属致しません。 台 (銃床) は若干の打ち傷や擦れ等は見受けられるものの、大きな割れや欠け等は見受けられず、全体に当時の黒漆仕上げが残った良好な状態が保たれています。 カラクリの作動については完全で、火挟を起こした状態で引金を引くと火挟がスムーズかつ力強く落ちます。 銃身内は銃口から銃身後部まで完全に抜けて (通って) おり、火穴も抜けています。 火蓋の開閉についても問題なく行う事が可能です。 尾栓もスムーズに取り外しが可能です。 木製のかるか(さく杖)が付属致します。
弊社は日本唯一の古式銃専門店として数多くの火縄銃を扱っておりますが、本品はその中でも「扱った事のない珍しいサイズの中筒」です。 このようなスケール・ダウンされた稚児筒の研究があまり進んでいませんので、これからの研究が期待される分野の品です。 サイズも珍しいですが、銃身に施された象嵌、黒漆塗りの銃床と見所の多い品です。 無銘で僅かに時代が下る可能性もあるため、非常にお値打ちな価格に設定してあります。 本品を使用した武家は特定できておりませんが、これ程の品を子弟に用意ができる相当な家柄であったのではないでしょうか? 実戦用ではなく子弟に大型の銃砲を扱い方を伝授できる家格を誇示するために作られた品と思います。 (MM)(KK)
【その他の情報】
平成8年6月19日愛媛教育委員会によって交付された銃砲刀剣類登録証が付いた完全可動する実物の古式銃です。 無可動実銃ではありません。古式銃は約150年以上前の古い機械物の骨董品であり、高価な品でございますので、出来ましたら現物をご確認の上、ご購入いただけますようお願いいたします。 無可動実銃とは異なり作動する機械物ですので、作動や仕上げの確認をご自身で行われる事をお勧めいたします。 通信販売でのご購入を検討される方は、詳細画像を十分ご確認いただいた上でご注文ください。
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